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科学研究費補助金 基盤研究(C) 課題番号20500756 教育用3次元表示回路シミュレータの開発 |
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【背景】 | 高等学校の物理において,コンデンサやコイルを含んだ電気回路は理解が難しい内容である。 近年,コンピュータの高性能化が進み,回路を解析してその電位や電流などを リアルタイムに画面上に表示することができるようになってきた。 専門家用のSPICE等が開発されてきており,教育用も作られている。 しかし,電位を3次元的に表示するようなものはなかったため, 直流回路の教育用シミュレータを開発し, 任意の回路を作れば電位と電流を解析し,電位を3次元的に表示する アプリケーションを開発した。これについては,授業実践によって評価を行い,電位を電圧(電位差)と 混同する可能性があるが,その点を注意して指導すれば有効である ことを明らかにした。
そこで,このシステムを拡張して,交流回路の場合にも同様なシミュレーション ができれば,電位の時間変化や,電荷・磁束まで表示することで, 回路の動作についてイメージで把握できるようになり, 有用な教材となることが期待される。 簡単な2素子の回路については,既に, コンデンサの電荷,コイルの磁束の表現の方法について 検討している。そこでは,交流回路の時間的変化に応じて 電位を3次元的に表現し,コンデンサの場合は貯えられた電荷を色とその濃さで 表し,コイルの場合は磁束を磁力線の濃さで表すようにしている。 また,時間変化のグラフについても表示できるようにしている。 これは,受動素子2個の直列接続の場合だけであるので,これを 利用者が自由に設計した回路において解析できるようにする。
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【目的】 | 高等学校で学ぶ範囲の 交流回路について 任意の回路を設計すれば,電位・電流・コンデンサの電荷・コイルの磁束を 解析して3次元的に表示するシステムを開発し,その教材としての有効性を検証する。また,定常状態だけでなく,過渡現象もシミュレートできるように することを検討する。 |
【特色と意義】 | 本研究によって開発する交流回路の3次元表示シミュレータシステムは 「教育用」であり,「電位の3次元表示」,「電荷や磁束の表示」 という点において特徴がある。与えられた回路ではなく,自由に設計した回路で, 生徒・教師が自分の希望に応じてシミュレートできるようなものとする。 本システムが使いやすい教材として完成すれば,直流から交流までの電気回路 の学習において,電位概念の把握,抵抗・コンデンサ・コイルの動作の把握等に 役立つものとなる。 |
平成20年度 | 【I-1.交流回路シミュレータの開発】 これまでに,直流回路の教育用シミュレータについては, 任意の回路を作れば電位と電流を解析し,電位を3次元的に表示する アプリケーションを開発している。この 直流回路シミュレータを拡張して,交流電源・コンデンサ・コイルを使えるように する。その方法については,現在のシステムを複素インピーダンスを用いることが できるように拡張して,各素子の電位差や電流を複素化し, 大きさと位相について解析できるようにすることで実現する。 【I-2.電位,電荷,磁束の3次元表示の実現】 直流回路では電位だけを3次元的に表現していたが,交流回路では, それを時間的に変化させる必要がある。また,コンデンサに貯えられて いる電荷やコイルに生じている磁束を3次元的に表示し,視点の移動に 応じて画像を変化させられるよう拡張する。これについても, 簡単な2素子の回路で,コンデンサの電荷,コイルの磁束の表現の方法について 検討してきている。そこでは,交流回路の時間的変化に応じて 電位を3次元的に表現し,コンデンサの場合は貯えられた電荷を色とその濃さで 表し,コイルの場合は磁束を磁力線の濃さで表すようにしている。 この様子を時間変化のグラフとして表示できるようにする。 |
平成21年度 | 【II-1.コンテンツの形成的評価と改良】 試作品が完成すれば,ホームページに掲載し,理科教育関係者に 同コンテンツを使用してもらい, 形成的評価を行う。教材として有用となるよう, システムの動作,デザイン等を利用者の立場で改良し, 使いやすいものとする。また,定常電流だけでなく,過渡現象についてもシミュレートできるような システムへの改良について検討する。 【II-2.授業資料の準備】 高等学校の授業において,本格的に使用できるものとするため, 大学院生の協力を得て,学習の手順書を作成し,また, ワークシートを準備する。 |
平成22年度 | 【III-1.教材としての評価】 現職教員に試行授業を依頼して,教材の評価を行う。この際, 直流回路の場合には,電位と電位差の混同を生じさせてしまったことを考慮して,電位差が電圧であることを 予め生徒に十分理解させておくことに注意する。 【III-2.システムの拡張】 定常電流だけでなく,充電や放電の様子などの過渡現象についても シミュレートできるよう改良を試みる。ただし,これについては, 変数の複素化だけの問題ではなく,微分方程式を解く必要があり, システムを初めから作り直さなければならないことも考えられる。 その場合は,本研究とは別に新たな研究計画を立て直す予定である。 |