3次元電気回路シミュレータ

− 過渡現象対応版(最新版 2011/1/31) −

3DCircuit_ver2
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− 直流・交流切替版(2009/9/24) −

3D_DC_Circuit
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− 直流版(旧版)−

3Dcircuit
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科学研究費補助金 基盤研究(C) 課題番号20500756

教育用3次元表示回路シミュレータの開発

【背景】

高等学校の物理において,コンデンサやコイルを含んだ電気回路は理解が難しい内容である。
コンデンサにおける電位差・電荷と電流の関係,コイルにおける電流・磁束と 起電力の関係について学んだ後に,交流回路を考える際,各素子における 電圧と電流の位相差が90度ずれることは知っていても,そのときの電荷や 磁束の状況まで想像して理解することは難しい。また,各瞬間の回路の電位の様子を イメージすることも難しい。

近年,コンピュータの高性能化が進み,回路を解析してその電位や電流などを リアルタイムに画面上に表示することができるようになってきた。 専門家用のSPICE等が開発されてきており,教育用も作られている。 しかし,電位を3次元的に表示するようなものはなかったため, 直流回路の教育用シミュレータを開発し, 任意の回路を作れば電位と電流を解析し,電位を3次元的に表示する アプリケーションを開発した。これについては,授業実践によって評価を行い,電位を電圧(電位差)と 混同する可能性があるが,その点を注意して指導すれば有効である ことを明らかにした。

稲垣惇史,原田二郎,前原俊信
「電位を3次元でイメージさせる電気回路シミュレーターの開発」
日本理科教育学会全国大会発表論文集第3号,p.364 (2005).
Atsushi INAGAKI, Kinya SHIMIZU, Jiro HARADA, Toshinobu MAEHARA,
"The development and Evaluation of 3-dimensional electric circuit simulator to make high school student image electric potentials"
Proceedings of the International Conference on Physics Educaton 2006 (Tokyo), p.232 (2008).

そこで,このシステムを拡張して,交流回路の場合にも同様なシミュレーション ができれば,電位の時間変化や,電荷・磁束まで表示することで, 回路の動作についてイメージで把握できるようになり, 有用な教材となることが期待される。

簡単な2素子の回路については,既に, コンデンサの電荷,コイルの磁束の表現の方法について 検討している。そこでは,交流回路の時間的変化に応じて 電位を3次元的に表現し,コンデンサの場合は貯えられた電荷を色とその濃さで 表し,コイルの場合は磁束を磁力線の濃さで表すようにしている。 また,時間変化のグラフについても表示できるようにしている。 これは,受動素子2個の直列接続の場合だけであるので,これを 利用者が自由に設計した回路において解析できるようにする。

中満貴之,前原俊信
「交流回路における電位の立体的表示教材の開発」
日本物理学会中国支部・四国支部 応用物理学会中国四国支部 日本物理教育学会中国四国支部 2007年度支部学術講演会講演予稿集,p.132 (2007).

【目的】

高等学校で学ぶ範囲の 交流回路について 任意の回路を設計すれば,電位・電流・コンデンサの電荷・コイルの磁束を 解析して3次元的に表示するシステムを開発し,その教材としての有効性を検証する。また,定常状態だけでなく,過渡現象もシミュレートできるように することを検討する。

【特色と意義】

本研究によって開発する交流回路の3次元表示シミュレータシステムは 「教育用」であり,「電位の3次元表示」,「電荷や磁束の表示」 という点において特徴がある。与えられた回路ではなく,自由に設計した回路で, 生徒・教師が自分の希望に応じてシミュレートできるようなものとする。

本システムが使いやすい教材として完成すれば,直流から交流までの電気回路 の学習において,電位概念の把握,抵抗・コンデンサ・コイルの動作の把握等に 役立つものとなる。

平成20年度

【I-1.交流回路シミュレータの開発】

これまでに,直流回路の教育用シミュレータについては, 任意の回路を作れば電位と電流を解析し,電位を3次元的に表示する アプリケーションを開発している。この 直流回路シミュレータを拡張して,交流電源・コンデンサ・コイルを使えるように する。その方法については,現在のシステムを複素インピーダンスを用いることが できるように拡張して,各素子の電位差や電流を複素化し, 大きさと位相について解析できるようにすることで実現する。

【I-2.電位,電荷,磁束の3次元表示の実現】

直流回路では電位だけを3次元的に表現していたが,交流回路では, それを時間的に変化させる必要がある。また,コンデンサに貯えられて いる電荷やコイルに生じている磁束を3次元的に表示し,視点の移動に 応じて画像を変化させられるよう拡張する。これについても, 簡単な2素子の回路で,コンデンサの電荷,コイルの磁束の表現の方法について 検討してきている。そこでは,交流回路の時間的変化に応じて 電位を3次元的に表現し,コンデンサの場合は貯えられた電荷を色とその濃さで 表し,コイルの場合は磁束を磁力線の濃さで表すようにしている。 この様子を時間変化のグラフとして表示できるようにする。

平成21年度

【II-1.コンテンツの形成的評価と改良】

試作品が完成すれば,ホームページに掲載し,理科教育関係者に 同コンテンツを使用してもらい, 形成的評価を行う。教材として有用となるよう, システムの動作,デザイン等を利用者の立場で改良し, 使いやすいものとする。また,定常電流だけでなく,過渡現象についてもシミュレートできるような システムへの改良について検討する。

【II-2.授業資料の準備】

高等学校の授業において,本格的に使用できるものとするため, 大学院生の協力を得て,学習の手順書を作成し,また, ワークシートを準備する。

平成22年度

【III-1.教材としての評価】

現職教員に試行授業を依頼して,教材の評価を行う。この際, 直流回路の場合には,電位と電位差の混同を生じさせてしまったことを考慮して,電位差が電圧であることを 予め生徒に十分理解させておくことに注意する。

【III-2.システムの拡張】

定常電流だけでなく,充電や放電の様子などの過渡現象についても シミュレートできるよう改良を試みる。ただし,これについては, 変数の複素化だけの問題ではなく,微分方程式を解く必要があり, システムを初めから作り直さなければならないことも考えられる。 その場合は,本研究とは別に新たな研究計画を立て直す予定である。